スペインワイン BUDO YA

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ワイナリー訪問 その他

キンタ・サルドニア

2017/03/09

バリャドリッド県サルドン・デ・ドゥエロ村にあるピーター・シセック氏のワイナリー、キンタ・サルドニアに行ってきました。D.O.リアス・バイシャスのテラス・ガウダ、D.O.ビエルソのピタッカムと同じグループです。

その品質を保証するため、原産地呼称を使うためにはいくつかの決まりがあります。使用品種、1ヘクタールあたりの最大収穫量、水やりの可否、そして一番大切なのが、決められた地域内にブドウ畑とワイナリーがあること。例えば、原産地呼称委員会で決められた地域にワイナリーがあっても、外から持ち込んだブドウを使ってワインを作った場合は、その原産地呼称を名乗ることができません。

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ここの畑は、リベラ・デル・ドゥエロの境界線からぎりぎりはずれているサルドン・デ・ドゥエロ村にあります。同じくリベラ・デル・ドゥエロを名乗れない(名乗らない)ワイナリー、アバディア・レトゥエルタがある村です。アバディア・レトゥエルタとその隣村トゥデラ・デ・ドゥエロのマウロという、強力な2つのワイナリーがリベラ・デル・ドゥエロに入りたがらなかったため、ここで境界線がひかれたという話もささやかれています。

しかし当然ながら、リベラ・デル・ドゥエロの境界線を数メートル出たからといって、ワイン作りに類い希に恵まれた土壌と気候であることに変わりはありません。むしろ、標高が高く、南向きの斜面に広がるこのブドウ畑は風通しが良く、日照条件にも恵まれ、個性的な素晴らしいブドウが採れます。世界的に有名な醸造家、ピーター・シセック氏がスペインで一番最初に目を付けたのは、実はこの畑だったのです。

現在は、テンプラニーリョ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、プティ・ベルド、カベルネ・フラン、マルベックの7品種をビオディナミ農法で丁寧に栽培しています。そして、キンタ・サルドニアとして、素晴らしいワインを作っています。

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キンタ・サルドニアでは、全畑において詳細な土壌分析を行っています。

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区画でも、ブドウ品種でもなく、分析された土壌別に、5000リットルのステンレスタンクで一次発酵させます。

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フレンチオークで樽熟成させます。リベラ・デル・ドゥエロの原産地呼称から外れているため、「クリアンサ」や「レセルバ」というカテゴリーは使えませんが、樽熟成何ヶ月以上、という感じで規制されることもありません。

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卵形のセメントタンク。フランスでは、白ワインの発酵に使用されることがあるそうですが、スペインではあまり見かけません。キンタ・サルドニアでは、一部の黒葡萄の熟成に使用しています。具体的には、山腹の下の方の畑から採れるよく熟したブドウの先端部分だけを茎ごとマセレーションしたものからとれる液体だけを、このセメントタンクで熟成させています。ブドウの先端部分は肩口に比べて糖度が低く、茎ごと発酵させることで、青いタンニンが強いワインになります。そのナーバスな部分が、セメントタンクで熟成させることで落ち着き、ブドウそのものが持つ素晴らしい力を発揮していきます。

卵形セメントタンクは、樽の匂いをつけずに、通常のオーク樽と同じ熟成効果が期待できます。

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オーク由来のアロマやタンニンは、あくまでもワインを支える屋台骨になるべきで、表面から見えて欲しくないと醸造責任者のフランス人ジェローム・ボウナウド氏は語ります。2000年からピーター・シセック氏に彼のワイナリー(ピングス、アシエンダ・モナステリオ)の畑の管理を全て任されているジェローム・ボウナウド氏は、恐らく、現在のスペインで最もビオディナミ農法に詳しい一人です。ブドウだけではなく、周囲の生態系、土の中の状態(石があって空気が通るかが非常に重要だと語ります。)を探り、風の匂いを嗅ぐそうです。「良いブドウを作れば、美味しいワインを作るために施設や技術はそれほど重要ではない。」同じことを語る、ラウル・ペレス氏とも深い親交があります。

ドミニオ・デ・ピングスでも、ピーター・シセック氏のジェローム・ボウナウド氏に対する信頼は非常に厚く、彼あってこそのピングスとも言えるのです。キンタ・サルドニアでは、ジェローム・ボウナウド氏が畑の管理も醸造責任者も担当しており、注目の若手醸造家の一人です。

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キンタ・サルドニア 2011をステンレスタンクから試飲させてもらいました。約2ヶ月後にボトル詰めする予定のワインだそうですが、既に非常に完成度が高い味わいでした。絹のように滑らか。ブドウ品種の特徴と、畑の特徴、自分が目指す方向を語りながら、そのブレンドの割合を教えてくれました。

実は、ジェローム・ボウナウド氏自身の興味深いプロジェクトがあります。素晴らしいポテンシャルがあるのに、厳しい自然環境にあるため、ほとんど廃畑になりそうだったところをいくつか買い取り、馬で耕し、再生させたところから作るワインです。それはそれは素晴らしい味わいですので、また改めてご紹介いたします。


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